ボルトの疲労強度向上策—後篇(CDボルトの開発）

摘要

「第6回（前篇）で，ねじ形状やボルト·ナッ卜材質等の疲労強度に及ぼす影響を定量的に評価することを行った.本回(後篇)では，前篇の結果を踏まえて，さらに画期的な疲労強度を示す「CDボル卜」について言及する.(1) CDポルトの形状：円筒部端から不完全ねじ部を除去するように鈍い円弧でつなぎ，余長部に向かってねじ山高さが変化するようにテ一パーをつけ，完全ねじ山部を少し残した形状.(2) CDボル卜の疲労強度：CDボルトの疲労限は，通常ポルトに比較して，約2倍も向上している.このように，顕著な疲労強度を示す理由として，ボル卜の疲労強度を支配する4つの要因を明らかにし，これらのすべてに対策を施しているからと考えている.すなわち，①荷重分担が不均一，高い②引張りの応力集中.③曲げの応力集中および④片当り，である.しかし，実用化に際して，ナットとの最適勘合位置に制限があるが，それは座金等の使用で調整可能である.(3) CDナッ卜：上記の制限が好ましくない場合，ナットねじ山側の一部を除去したCDナッ卜が有効であるが，疲労強度向上効果は，ボルトの場合の1/3?1/4程度で小さい.(4) CDボル卜の静的強度：上記（1)に示す形状から，ナットとの勘合部の一部に完全ねじ山部を残し，かつ余長部も存在するので，静的強度は，通常ボル卜の場合と変わらない.なお，このようにポル卜の疲労強度を支配する要因を明らかにし，かつ4つの要因すべてに対策を講じたねじ締結体を提示しているのは.CDボルトが最初であると考えている.今後の方針：第8回では，疲労強度の優れたCDボル卜の現場適用例について紹介する.