原子力利用の功罪

摘要

本誌の読者はご存じであろうが，アグネという名前は傑出した4人の科学者の頭文字をとったものである。 並はずれた知性の持ち主たちの，並はずれた努力の下に科学は発展してきた。 その歴史を元に戻すことはもちろhできないが，科学が世界全体の人々にもたらした功罪を私は時々考える。 核＝原子力の世界を開いたのは，4人のうち最も新しい時代に生きたアインシュタインであった。 ナチスの脅威を逃れて米国に渡ったアインシュタインは，ナチスに対抗するため米国大統領ルーズベルトに原爆製造を進言した。 しかし，原爆が完成する前にナチスは崩壊，完成した原爆は広島·長崎で生活する人々の頭上に落とされた。 その報を聞いたアインシュタインは「ウェー」と呻き，「生まれ変わるなら鉛管工になりたい」と言ったという。 広島·長崎で殺された何十万もの人々は，そのほとhどが非戦闘員であった。 そして，その一人ひとりが名を持ち，親や子，あるいは恋人を持って生活していた人たちである。