各種純金属の抗菌性評価

摘要

（1）フイルム密着法により，Ti，Co，Ni，Cu，Zn，Zr，Mo，Sn，Pbの9種の純金属の抗菌性能を評価した結果，S．aureusに対してはCo，Ni，Cu，Zn，Zr，Mo，Pbの7種の純金属で，E.coliに対してはTi，Co，Ni，Cu，Zn，Zr，Mo，Pbの8種の純金属で抗菌性が確認された。 （2）シェークフラスコ法により，Ti，Co，Ni，Cu，Zn，Zr，Mo，Sn，Pbの9種の純金属の抗菌性能を評価した結果，S. aureusに対しては，Pbで，E.Coliに対してはCo，Znで抗菌性能が確認された。 （3）シェークフラスコ法実施時の試料表面へのE.?Coliの付着の様子を，二重染色試薬を用いた蛍光顕微鏡観察により評価したところ，抗菌性能を有する金属の表面では，微生物が死滅している様子が顕著に確認された。 （4）フイルム密着法によるCo，Ni，Cu，Zn，Zr，Mo，Pbの7種類の純金属のS.aureusに対する抗菌性の優劣を，D値として推定した。 これにより∴経験的に知られていた金属の抗菌性を定量的に評価できる可能性を示した。（5）抗菌性能を有する金属が存在する環境に暴露された細菌の細胞には損傷，または異変が発現している様子をTEM観察により確認した。 本研究は，社団法人日本鉄鋼協会鉄鋼研究振興助成（第14回）を受けたことを付記し感謝する。微生物細胞の電顕観察結果をもとに，種々の御討論をいただいた大阪大学大学院医学系研究科教授杉本央博士，抗菌性の評価に関して御討論いただいた日本大学生物資源科学部助手古川壮一博士に深甚なる謝意を表す。 電顕による細胞観察にご協力いただいた大阪大学接合科学研究所才支術支援職員花市敬正氏に謝意を表す。 本研究に協力をいただいた，大阪大学接合科学研究所康谷恭三技術支援職員に謝意を表す。