二相ステンレス鋼板·オーステナイト系ステンレスクラッド鋼板溶接継手部の疲労強度に関する一考察

摘要

従来，ケミカルタンカー建造に多用されて来たオーステナイト系ステンレス（SUS316LN）鋼板（Ni含有量10～12%）と，二相ステンレス（SUS329J3L）鋼板とを比較すると，SUS329J3L 鋼板のNi含有量はSUS316LN鋼板の1／2程度である。SUS329J3L鋼板をケミカルタンカー建造に適用できれば，希少資源節約効果が大きい。二相ステンレス鋼板は，フェライト（α相）とオーステナイト（γ相）との二相混合組織であり，オーステナイト系ステンレス鋼板が有する良好な延性·靭性と，フェライト系ステンレス鋼板が有する優れた耐応力腐食割れ（耐SCC）性とを兼ね備えたステンレス鋼板であるといえる。本報では，二相ステンレス（SUS329J3L）鋼板をケミカルタンカー建造に実用することを目的として，SUS329J3L鋼板同士の突合せ溶接継手や，SUS329J3L鋼板とSUS316Lクラッド鋼板との荷重伝達型·荷重非伝達型完全溶け込み十字溶接継手の疲労強度を把握·検討した結果について報告する。