エポキシ樹脂／PES／NBR3成分系ブレンドの構造と物性

摘要

多成分ブレンド系によるエポキシ樹脂の強靭化を目的とし，耐熱性の優れた非品性のスーパーエンプラであるポリエーテルスルホンおよびエラストマー成分であるアクリロニトリルブタジエンゴムを用いた3成分ブレンド系エポキシ樹脂（EPOXY／PES／NBR）の構造と物性について検討した結果，次の知見が得られた．エポキシ樹脂にポリエーテルサルホン（PES）およびアクリルニトリルブタジエンゴム（NBR）を添加した3成分ブレンド系エポキシ樹脂（EPOXY／PES／MBR）は大きく分けて二種類の構造をとり，それぞれの構造に対応した物性を示すことがわかった．その一つは，PESおよびNBRの添加が極めて少量の場合に，エポキシ樹脂とPESの均一構造を示すマトリックス中にNBRの分散相が凝集した梅島構造が存在する，いわゆるサラミ構造をとる．このサラミ構造を示す場合は，材料は脆性を示す．一方，PESおよびNBRの添加量を若干増加した場合は，エラストマー成分であるNBRをマトリックス相とし，エポキシ樹脂リッチ相が球状を示し，しかもそのエポキシ樹脂リッチ相の周りにPESリッチの小さな球状の分散相が存在する，いわゆる相通転構造を示す．このような相逆転構造を示す場合は，材料は延性を示す。上記に示した2種類の構造は，PESおよびNBRの添加量により制御することが可能である．しかも，相逆転構造を示す構造をとるための添加量は2成分系材料と比較して極めて少量で可能であり，成形性や物性を損なうことが少ない．添加するPESおよびNBRの添加量やその末端基，第1次硬化温度などの条件を適切に選択することで動的粘弾性における貯蔵弾性率の低下を抑え，かつゴム相をマトリックスとする高性能な材料を設計することが可能となる．しかも，耐熱性の指標となるガラス転移点は末改質のエポキシ樹脂と同等の高い値を示す。 相逆転構造を示す3成分ブレンド系エポキシ樹脂（EPOXY／PES／NBR）の曲げ特性は，添加するPESおよびNBRの添加量，PES末端官能基および第1次硬化温度により制御することが可能であり，かつその値はモルホロジー（エポキシ樹脂リッチ相の粒径）に影響される．3成分ブレンド系エポキシ樹脂（EPOXY／PES／NBR）において掛運転構造をとる場合は，延性破壊を示し，モルホロジーの変化に伴いJ値が変化する．特にPESおよびNBRの添加量が増加するほど，破壊靭性値は向上するので，弾性率等の他め物性とバランスをとることが重要である．