50.肺腺癌に肺性肥厚性骨関節症を合併しステロイド使用により症状改善がみられた1例

摘要

症例は69歳，男性.X-2年7月に右上葉肺腺癌と診断した.EGFR変異陽性であり，1stlineとしてErlotinib治療を開始した.原発巣および縦隔リンパ節は縮小維持となっていたが，X年9月の胸部CTで原発巣と右肺門リンパ節の増大を認めPDと判定した.血液検査でT790M陽性が判明し，X年10月より2ndlineとしてOsimer-tinibによる治療を開始した.PD判定となったX年9月ごろより両肘膝関節痛，下腿浮腫の訴えが出現した.下腿単純X線で脛骨末梢に骨膜反応，下腿MRIでも骨膜に沿って輝度変化を認めた.骨内には腫瘍性変化ないことから肺性肥厚性骨関節症と判断した.肺性肥厚性骨関節症は腫瘍随伴症候群の一つで，1)四肢遠位の骨.関節の腫脹疼痛，2)長管骨の骨膜下新生，3)ばち指が主症状とされる.本邦では原発性肺癌に合併する頻度は0.2?0.6%と報告されている.治療法としては原疾患に対する治療が優先されるが，反応がない場合は解熱鎮痛剤やステロイドが試さることが多い.本症例では Osimertinibへ治療変更後も関節痛や下腿浮腫が改善しなかったため，NSAIDsにステロイドを併用し症状が軽快した.肺癌に併発した肺性肥厚性骨関節症は稀であり，文献的考察を踏まえて報告する.