日本小児科学会災害対策委員会報告: 平成28年熊本地震で日本小児科学会から派遣された医師へのアンケート調査結果報告および，今後の日本小児科学会による被災地診療支援への取り組み

摘要

平成28年4月に熊本県を中心に発災した地震災害では，総合周産期母子医療センターである熊本市民病院が被災し，NICUの入室患者を他施設へ避難させるという事例を経験した.また，地域の小児救急診療を担っていた施設や，大きな被災を免れた小児集中治療室を有する拠点病院では，増えた受診者数への対応などのため，医師が不足する事態となった.日本小児科学会(以下，当学会）は，日本小児救急医学会とともに熊本県からの医師派遣要請を受け，日本小児救急医学会と連携しつつ診療支援を目的とした急性期からの小児科医の派遣調整を行った.被災後5日目の4月21日から5月13日までに，熊本赤十字病院と熊本地域医療センターに61名の小児科医が赴き，様々な診療支援を行った.一方で，当学会が被災県から要請を受け，発災後の比較的早期から診療支援の調整を行ったという経験は，かつてない.そのため，診療支援を行った多くの医師が，どのような支援を行ったかについて検証し，今後の診療支援体制を構築する際の改善点を抽出すベきでもある.今回，日本小児科学会災害対策委員会（井田孔明委員長）では，当学会が調整を行い，被災地で診療支援を行った医師に対するアンケート調査を実施した.その結果を報告するとともに，今後の診療支援体制に必要な課題と対策を提案する.