急性期一時的下大静脈フィルターを用い軽快した原発性抗リン脂質抗体陽性肺塞栓症の1例

摘要

患者は29歳，男性．突然の労作時呼吸困難出現，精査加療目的にて当院紹介入院．胸部CTにて肺動脈内に血栓を，肺血流シンチにて欠損像を認め，肺塞栓症と診断した．下大静脈内に遊離血栓を認め，急性期一時的下大静脈フィルター留置術を施行した．抗凝固療法および血栓溶解療法にて，下大静脈内遊離血栓は消失し，永久型下大静脈フィルターは留置しなかった．International normalized Ratio（INR）2い5を目標にワーフアリンによる抗凝固療法を継続し，発症後約2年間血栓症再発を認めていない．本症例は膠原病合併がなく，抗カルジオリピン複合体抗体陽性，かつ血栓症を認め，原発性抗リン脂質抗体症候群と診断した．本症候群に伴う肺塞栓症例において永久型下大静脈フィルターの適応は未だ一定しておらず，急性期一時的下大静脈フィルター留置と慢性期の十分な抗凝固療法の有用性を示す症例と考え，報告した．