ヘリテ一ジ創出過程における保存建造物の選択と過去の示され方-「横浜港発祥の地」を事例として-

摘要

本稿は,建造物や景観の保存にょって過去を示すとされるヘリテ一ジの創出において,保存建造物はどのょうに選択されるか,また過去がどのょうに示されるかを明らかにする.事例とする象の鼻パ一クは,2009年,「横浜港発祥の地」をテ一マに創出されたヘリテ一ジである.象の鼻パ一クは,さまざまな公的事業にょって,次々と新たな役割を課せられた.このため,個々の建造物の存廃決定過程において,歴史的な価値づけは,美的,経済的な価値づけとの対立を回避するょう,柔軟に変化しながら行われた.その結果,保存建造物の選択は,ヘリテ一ジ全体にはたらく意図にのみ従うのではなく,流動的なものになり,個々の選択との整合性を図るためにヘリテ一ジ全体の価値づけが見直されることもあった.また,象の鼻パ一クで示される過去は,計画の途上いっでも.さまざまな基準で取捨選択でき,さまざまなかたちで示すことができる可鍛性の高い資源として利用された.