豊羽鉱山における熱環境解析による熱環境改善への寄与

摘要

熱環境解析については古くから多くの研究がなされているが,井上らはパソコンを主たるツールとした熱環境解析プログラムを開発し，金属鉱山を対象とした研究を行っている。 一方，単体の地下空間の気流挙動の解析には，一般に数値流体力学（Computational Fluid Dynamies－CFD）が用いられるが，鉱山や地下発電所等のように空洞と坑道が複雑に絡み合う地下構築物において，適用の可能性も検討されているものの，現在のパーソナルコンピュータの処理能力では，特に熱問題を取り扱った通気挙動予測を行うことは現実的でない。 例えばサブレベルストーピング採掘法を採用し大空間が形成されるような鉱山に，通気網解析を基礎とした熱環境解析法を適用する場合，そのままでは，大空間の熱的な条件に対応することは不可能で，正確な解析は期待できない。 この部分のみをCFD等で解析することは可能であるが，その場合でもその空間に入る通気の温度·湿度がどの程度の値になるかを求め，境界条件として与える必要がある。 このためには大空間を含む熱環境解析があらかじめ必要である。 また，数多くの事例を検討し，最適な通気方法を検討するような場合には，通気網解析を基礎とした熱環境解析法のみで解析することが実際的である。 従来，このような観点から検討された論文は見られない。 このため，本論文ではこの大空間の取り扱いについても検討を行った。