超高強度ボルトの鋼桁橋の適用性に関する検討

摘要

本論文では，F15Tクラスの超高強度ボルトSHTBを鋼桁橋へ適用することによる効果およびSHBTを適用する際の基本的な問題点について検討した。 その結果，得られた知見を以下にまとめる。 1）SHTBを用いた継手の連結板として安心して使用できる鋼種はSM570材である。 SM490Y材を連結板として使用すると初期ボルト軸力導入時で既に高い応力レベルに達するため初期降伏が早期に発生し，すべり強度が若干低下する。 しかし，その低下率は小さく，すべり先行型（β≦1．0）の継手であればSM490Y材も使用可能である。 2）ボルト行間隔を道路橋示方書の上限値である300mmまで広げても主すべり発生時の強度に大きな差は現れず，また設計値レベル以上の強度を確保していることを確認した。 3）SHTBを多列配置した継手の解析を行った結果,その強度の低下傾向はF10T高力ボルトを多列配置した場合と同様なものであった。 従って，高力ボルトにSHTBを用いた場合でもF10Tの場合と同様の強度低減係数が適用できる。 4）SHTBの設計耐力はF10高力ボルトの約1．5倍であり，ボルト本数を2/3程度に減らすことができる。 F10TとSHTBを用いた継手の比較解析を行った結果,SHTBを用いて行数を減らした場合は純断面積が大きくなりボルトの軸力抜けが緩和され，また列数を減らした場合はボルトの多列化に伴う強度低減が緩和されるため，各々F10T高力ボルトを用いた継手よりもすべり強度が上昇することを明らかにした。 5）SHTBを用いた場合の経済効果を評価するため，現行の道路橋示方書の範囲で，実橋梁にSHTBを用いた場合と用いなかった場合について，鋼板重量とボルト本数を試算により比較した。 その結果,本試算の範囲ではSHTBを用いることにより，鋼板重量は最大で1．4％，ボルト本数は最大で23．4％低減させることができた。 6）継手部工費については，SHTB価格をF10T高力ボルトの1．5倍と仮定した場合，本試算の範囲では最大で20％程度のコスト縮減が可能である。 しかし，SHTB価格をF10T高力ボルトの2倍と仮定するとその経済効果はかなり小さくなる。