高反射率塗装による吸収日射低減効果に関する研究 第3報 室内温熱環境および冷暖房用電力消費への影響

摘要

本報告では，金属折板屋根を高反射率化することによる室内温熱環境および冷暖房用電力消費への影響を把握するために，高反射率塗料を塗布した既存建物を対象に夏季，冬季を通じて測定を行い，気象条件との関係を検討した．その結果，以下の知見が得られた．·塗装部と未塗装部の温度差は屋根表面から室内へ行くにしたがい小さくなる。室温は、壁、床、窓など屋根以外からの伝熱や天井断熱による屋根からの伝熱の緩和があり、塗装、未塗装での温度差が小さくなる。·屋根高反射率化による屋根表面温度，小屋裏空気温度，室温の低下度合いは気象条件によって変化し，日射量の多い夏季には大幅な低下が見られ，冬季には低下度合いが小さくなる．よって，金属折板屋根を持つ建物では，屋根高反射率化による夏季の室温改善は冬季の室温低下より効果が大きいと考えられる，·屋根高反射率化により冷房用電力消費は大幅に減少するが，暖房用電力消費は増加する．この増減率は屋根の日射反射率および気象条件により異なる．·冷暖房用電力消費への影響を対策前後で比較検討する際には，気象条件の影響を受けるので，気象条件と冷暖房用電力消費との関係を検討し，標準的な気象条件での比較を行うことが有用である．今回の検討では高反射率塗装により約7％の冷暖房用電力削減と推計された．