衛星通信用高速デジタル変復調器

摘要

放送局における衛星通信システム(Satellite News Gathering: SNG)は，1989年導入当初のアナログ伝送からSDデジタル伝送を経て，本格的なHDデジタル伝送時代を迎えている。 2003年の地上デジタル放送開始に伴い，HDTV (High Definition Television)番組製作が増加する中，情報量が多く広い伝送帯域を必要とするHDTV信号の伝送効率の向上が課題であり，三菱電機は従来のSDTV (Standard Definition Television)と同様にHDTVの1トランスポンダ4チャンネル伝送を可能とする，DVB-S2方式の衛星通信用高速デジタル変復調器“MS8100TX（変諷器）／MS8100RX（復調器）”を国内メーカーで初めて開発した。 DVB-S2は，2005年3月に欧州の標準化団体DVB (Digital Video Broadcasting)により規格化された新しい衛星伝送規格であり，誤り訂正方式にLDPC (Low Density Parity Check codes)符号＋BCH (Base-Chaudhuri-Hocquenghem)符号の連接符号を採用し，多値変調方式である16APSKや32APSKを用いて，従来規格のDVB-S/DSNG (Digital SNG)に比べて伝送効率を約30％向上している。 今回開発した変復調器は従来規格のDVB-S/DSNGにも準拠し，既存装置との相互接続性を確保しておりシステム更新や拡張に対応できる。また㈱フジテレビジョン，宇宙通信㈱と共同で衛星伝送実験を行い，SNGシステムにおいてDVB-S2方式を使用してHDTVの4チャンネル伝送が可能であることを実証した。 フジテレビジョンでは，今年度からDVB-S2方式を採用したSNGシステムを順次導入して運用を開始した。