北里大学における自給飼料100%による牛肉生産と加工、販売の取り組み: 北里大学発、北里八雲牛ここにあり！！

摘要

北里大学獣医学附属フィールドサイエンスセンター（FSC) 八雲牧場（以下.八雲牧場）は1976年に開設され，当初は 370 haの広大な面積を利用した肉牛の放牧飼養による牛肉生 産を目指したが，時代の流れから安価な輸入穀物飼料を利用 した脂肪交雑重視の牛肉生産に移行していった.しかしなが ら.飼養頭数の増加に伴って，家畜ふh尿の処理問題が発生 したことから，大学附属牧場として「現行の穀物多給の畜産 方式から脱却を図り，未利用資源を最大限に活用した畜産方 式を確立し，その最先端を目指すべき」との理念を掲げ.1994 年に自給飼料100%による牛肉生産方式に転換した.生産開 始から3年後の1997年には独自の販売ル一トを開拓し，「ナ チュラルビーフ」という名称で首都圏の生協団体に販売を開 始したが，消費者は安価で柔らかい牛肉を求めたため，在庫 が多<残る問題が発生した.このような問題解決のため，八 雲牧場ではまず，自給飼料100%による牛肉生産方式を「北 里八雲」で商標登録し，この方式で生産されたゥシを「北里 八雲牛」と命名し.ブランド化を図った.さらに，より有機 的な牛肉生産方式を確立するために，2005年にはデン卜コ一 ンサイレージの栽培、給与と草地への化学肥料、農薬の施肥 を中止し，完全な有機的牛肉生産方式に移行した.その結果， 2009年には肉用牛で初めて有機JAS認証を取得し，現在で は国内で唯一,有機牛肉を生産する牧場となっている.この ように現行の我が国の牛肉生産方式との対極化を図ること， すなわち，有機的管理草地を中核とした資源循環型畜産によ る牛肉生産方式を確立させ，消費者を牧場に受け入れる産地 交流や首都圏の催事へ積極的に参加することにより，消費者 の認知度も向上し，現在では順調に販売が行われている.