モニタリングに基づく物質動態広域評価の最前線 —広域における炭素、窒素、水の動態を探る一8.全球スケールの陸域物質動態シミュレーション

摘要

土壌圏を含む陸面において生じる，炭素や水といった物 質循環，またそれと連動したエネルギー交換は，大気中の温室効果ガス（GHG)濃度や，蒸発散速度、太陽光反射率 のような大気陸面間相互作用の変化を通じて，地域や全球 の気候にも影響を与える（Foley W ah，2003).具体的に は，大気中にC02として含まれる炭素の約1596に相当す る量が，毎年，光合成と呼吸を通じて大気-陸面間で回転 していると見積もられており（IPCC, 2013)，うち陸面か ら大気に放出されるC02の8割程度は土壌表面からのフ ラックス（土壌呼吸）と推定されている（Bond-Lamberty and Thomson, 2010a).そして陸面，特に土壌圏は巨大 な炭素の貯蔵庫であり，2011年時点において大気中に含 まれる炭素量が約829Pg (ベタグラム，1015g)であるの に対して，陸面には植物バイオマスとして320-520Pg, 土壌（永久凍土を除く）にはl,500-2，400Pg，永久凍土に は最大l,700Pgもの有機炭素が貯蔵されていると推計さ れており（IPCC, 2013),これらの増減は，今後の大気中 GHG濃度に大きく影響する.また，陸面から大気に戻る 水蒸気の8-9割が蒸散によるものと推定されており，その際に陸面に吸収される太陽放射エネルギ一の約半分が消費される（Jasechko et al" 2013).このような陸面の物質 循環、エネルギー交換過程を気候分布の再現や予測で考慮 するために，全球スケールの陸面の諸過程を取り扱うモデ ル，LSM (Land Surface Models ：陸面過程モデル）が誕 生し発展した.