争点としての家族農業経営継承—歴史的使命を終えた？フランス農業構造政策一

摘要

1960年代より行われてきたフランスの農業構造政 策は，経営の過度の集中を抑制し，青年の就農を促進 し，中規模程度の家族経営を近代化することを目的と してきた.それは小作人に有利な小作権と農地市場へ の介入，新規就農助成を柱とし，こうした施策の実施 に際して，新規就農や経営規模拡大について事前の認 可を求めている（構造コントロールと呼ばれる）.我が国と同様，国際競争力向上のための経営の大規 模化が要請されている.しかし大規模化しすぎた経営 の^，従来のような家族成員による農地への出資と いった，家族的連帯による経営移譲と並hで農外から の資本調達の必要性も課題となっている.また今日に 至る経営規模拡大は主として借地によるものであり， 全農地面積に占める借地の割合はすでに7割を超えて いる（須田，2015).ところが近年，地主による農地の 資産的保有を可能とする仕組みが普及し，また構造コ ントロールの回避による大規模な経営への農地集積が 進展し，青年の新規就農が抑制されていることが指摘 されている.'本稿はフランスの家族農業が抱える皿 と現状について検討を行う.フランスの構造政策は我が国の同様の施策の範となってきた経緯もあり，こう した検討は我が国に重要な知見を提供してくれよう.