近藤康男の簿記,会計思想の特徴と現代的意義

摘要

営の競争力を向上していくために農業簿記, 会計学がどのような役割を担い，どのような貢献をす ることができるのかが喫緊の課題となっている.日本簿記学会,簿記実務研究部会は，2010年から3年間に おいてその課題に対する検討を行った.その結果，同 研究部会は，現在，農業簿記,会計学は競争力向上に 係る役割を果たしていないとしたうえで,その理論的 な問題点は難しく特殊な記録形式である複式簿記が暗 黙裡のうちに農業簿記の基礎に据えられてしまったこ とにあると結論づけている（戸田2014).農業におけ る複式簿記の本格的な採用は，1938年の近藤康男『農 業簿記学』に端を発する（近藤1938).そこで，本論 文では農業簿記,会計学の生成期に注目し，当期にお いて大槻正男（註1)と共にその普及'浸透に多大な 影響を及ぼした近藤康男の会計思想を研究対象とする. 近藤はどのような会計思想に基づき，農業へ採用する 簿記を単式簿記から複式簿記へ再び軌道修正すること を主張したのだろう力、.