東日本大震災の津波被災地における復旧、復興の経過と現状の課題-岩手県.宮城県を中心に，震災8ヶ月後の状況-

摘要

本稿の目的は，岩手県と宮城県の津波被災地を対象 に，東日本大震災発生以降の復旧、復興の過程を整理した上で，3月11日から概ね8ヶ月を経た時点（11月中 旬）での被災地の現状と課題を包括的に報告することで ある1)。震災後8ヶ月というのは，ちょうど国の第三次 補正予算が成立した時期(2011年11月21日）に当たり， 復旧復興の一つの区切りとして意P未があるように思う。この時点での津波被災地の現状を一言で述べれば，復 興の入口のなお手前にいるというところであろう。被災 者にとつて最大の関心事である住宅と仕事はともに復興 の目処が立っていなかった。被災した各市町村では復興 計画の策定が進みつつあつたが，そこで示された地区ご との住宅移転計画は，位置も規模も抽象的な記述にとど まっており，かつ財政的な裏付けがなかった。本格的な 復興予算となる国の三次補正予算案が国会を通っていな かったその当時，市町村は具体的な住宅移転計画を住民 に示せずにいたのである。仕事についても，生産手段の 大半を失った農業者と漁業者の多くは，がれき撤去等の 緊急雇用等で一息ついてはいるものの，本業への復帰の 目処が立つていなかつたし，地域の雇用確保の担い手で ある中小、零細事業者や個人事業者の多くもいまだ事業 の再建に取り組めずにいた。