きのこの化学雑記帳(4)-生命科学に貢献するきのこ毒-

摘要

おとぎ話の絵本によく出てくる、赤い傘に白い斑点のあるべ二テングタケは、主母きのこの中でも、最もよく知られているものだろ、つ。日本では、毒きのこの代表選手のように思われているが、所変われば品変わるで、ドイツでは〃幸せを呼ぶきのこ〃として親しまれ、年末にベニテングタケを模つた置物などを友達同士で交換する習慣がある。友情のしるしなのだそうである。ベニテングタケはまた，化学、薬理学の分野でも有名で、忘れてはならない毒きのこである。それは、後に非常に有用な神経薬理研究試薬となつたムス力リンが、このきのこから初めて見つかつたことによる。ベ二テングタケの毒成分研究は、きのこ毒研究として最も歴史が古く、 19世紀初頭には最初の研究報告がある。