異常家禽の通報の分析と高病原性鳥ィンフルェンザ緊急防疫体制の改善

摘要

高病原性鳥ィンフルェンザへの早期診断およびその後の初動対応を迅速かつ的確に行うため，2012年か ら2017年の6年間の異常家禽の通報708事例について分析した。その結果，399事例（56%)は明らかな 事故および人為的管理失宜であり，野生動物の侵入が18事例（4%)含まれていた。233事例（33%)は， 大腸菌症，コクシジゥム症など，臨床症状および剖検成績から死亡原因が特定可能な疾病であり，特徴病変 の画像情報，経過観察により沈静化を確認した。76事例（11%)はHP AIを否定できず農場への立入検査 が実施されたが，伝染性気管支炎ウィルス感染を伴う大腸菌症，低血糖症，移動、寒冷ストレスなど，特徴 病変に乏しい症例または経過観察で異状が改善しなかつた事例が大半であつた。以上から，事故と断定でき ないまたは病名が推定できない疾病の場合は優先的に農場立入を行うこととし，原因が推定できた場合でも， 経過観察により異常が改善しない場合も，立入検査の対象とすべきと結論づけた。また，立入の際は，緊急 防疫計画の策定，関係機関への連絡を行い，通報受理2-4時間以内に簡易検査を実施すべきとした。さらに， 所内および関係機関との事後検証によって，防疫計画に必要な情報の充実，埋却地の確保，汚染物品の処理 方法を精査，具体化すべきものもあった。