果樹遺伝資源の導入（1973～1995年）

摘要

日本列島はかってユーラシア大陸と陸続きであったため，野生の果樹については朝鮮半島や中国と同じ属，種の分布もみられる．わが国に分布する野生果樹は，ヤマモモ，クリ，クルミ，ブドウ，リンゴ，ナシ，サンザシ，キイチゴ，アケビ，スダリ，マタタビ，ハシベミ，スノキ，スイカズラ，グミ，トチ，シイ，カヤ属等の樹種（北村，村田 1985）であるが，その多くは現在栽培されている種とは異屯っている。 また，遺跡の出土品から，縄文時代にブドウ，クルミ，クリ。 ヤマモモ，ハシベミ，カヤ，シイ等，弥生時代になるとカキ，ナシ，ビワ，モモ，スモモ，ウメ，キイチゴ，ダミ等も利用されていたと推定されている（小林1986）。 奈良時代初期の「古事記」（711年）や「日本書記」（720年）にブドウ，モモ，スモモ，タチベナ（現在のタチバナと同一かは不明），クリ。 ナシ。 シイが記載されている（菊池194乳　 小林1986，星川1987）。 また，平安時代の「続日本記」（797），「本草和名」（918年），「延喜式」（927年）や「倭名類策抄」（923－930年）には，タチベナ，ユズ，コウジ，ダイダイ，ヤマモモ，ビワ，モモ，ウメ，スモモ，アンズ，ナシ，ワリンゴ，キイチゴ，力も　 ナツメ，ムベ，アケビ，クリ，クルミ，ハシベミ，トチ等が記載されておら（菊池1948，小林19汎　星川1987），平安時代以前にこれらの果樹が利用されていたと推察される。鎌倉時代から安土桃山時代には，「庭訓往来」（1269－1350年），「尺素往来」（1487年），「親民鑑月集」（1564年）等の資料からウジュキツ，コミカン，クネンポ，キンカン，甲州ブドウ，ギンナン，ザクロ等が既に渡来，甲州ブドウ，コミカン，クネンポ等が一部で栽培されていたとされる（石原1943，菊池1948，小林1986，星川1987，岩崎1991）。 果樹には中国が発祥の中心地とされている樹種が多く，交易を通して多くの樹種が伝播し，江戸時代までにわが国で利用されていた樹種の構成に大きな影響を与えてきた。