資金循環からみるコソヴォの経済構造－試論

摘要

本稿の研究課題は，独立間もないコソヴォの経済構造を，主に資金循環の観点から分析·検討することに置かれている。コソヴォの経済は個人消費が主導する成長構造であるが，長引く紛争や混乱によって企業部門が低調であるため，消費は輸入財に依存しており，著しい対外不均衡に苛まれている。まず，コソヴォの対内循環を銀行部門の諸統計より分析·検討し，圧倒的な規模の経常収支赤字が低調な企業部門と強力な個人消費によるものであるにもかかわらず，銀行による金融仲介は消費者金融よりも企業金融の方が相対的に活発に行われていることを指摘した。次に，対外循環を国際部門の諸統計より分析·検討し，国際社会からの資金援助が減少している一方で，在外コソヴォ人による送金は年々拡大していることを指摘した。さらに，闇経済を経由した資金や在外コソヴォ人からのロビイング資金など統計に反映されない流れも，重要な要因であることを指摘した。