草原生物群集の成立と衰退

摘要

日本は森林国であって，草原は森林の破壊によって生じる二次的な植生であり．局地的かつ一時約な存在であると思われているが．実際には，広大な草原が数千年以上も維持され，日本の草原特有の生物群集が形成されてさた．日本は有史以前から草原国としての性格も持ち合わせていたのである．しかしながら．現在では草原の重要度は低く評価されている．草原に強く依存した出師摘型のよ業から，化学肥料や輸入飼料に依存したよ業へと大きく様変わりした現在では，草原は農業にとって重要な存在ではなくなっている．そのため，数十年前には水田面積よりも広大であった日本の半自然草原の面積ま急速に減少し，一部の地域を除けば，ほぼ消滅状態となっている．このままでは，草原もそこに住む生物たちも日本から消滅するのは時間の問題である．筆者は，日本の草原の価値は，高く評価すべきであり，草原特有の生物群集を積極的に保全すべきであると考えている．本稿ではその見解を紹介したい．