人口減少下の農林地資源管理問題と粗放型畜産の推進 －肉用牛繁殖経営を例に－

摘要

かつて，わが国の農業は農地資源の制約が強い中で，資材や労働の高投入により，高い土地生産性をあげてきた。 高度成長期以降，農業技術は，農地面積当たり産出水準を維持しつつ省力化を可能にする機械や施設等の資本使用的技術にシフトし，その方向は現在でも主流である。 その一方で，地形や圃場条件から資本使用的技術による省力的営農の展開が困難な中山間地域を中心に，耕作放棄地問題を発生させている。 美しい農村景観と快適な居住環境を支えてきた稲作を中心とする営農は，機械化による省力化の限界，米価の低下や農業者の高齢化等により，その継続が困難になっている。 100年後に6，400万人に半減すると推計される少子高齢化、人口減少のもとで，誰がどのような方法で国土資源を保全するのか，農業農村は，大きな試練に直面している。