創業100周年を迎えた名門企業で知る - 知られざる「ピストン」の濃密で深遠な世界

摘要

エンジンは多種多様な部品を組み合わせて作り上げられる装置だ。それらの中でも“エンジンの象徴”となるのはコンロッド、クランク、カムシャフト、バルブ系、ブロック、そしてビストンといったあたりではないだろうか。プレス向けの新型車発表会や試乗会の会場でも、新規開発エンジンがある場合、ほとhどはエンジン単体に加えてそれらの部品が単体展示されていて、説明員氏は嬉々としながら「この部分をこのようにしたので、効率が5%高まりました」などと教えてくれる。中でもピストンは、人々の耳目を集めやすい部品ではないだろうか。クルマ好きを自認する人なら、一度は実物を見て、触った経験があるはずだし、そこまで行かなかったとしても、自動車雑誌等に掲載されるピストンの写真をしげしげと眺めたことがあるのではないかと考えるものだ。そして正直に言う。筆者もピストンについては「まあ、鋳物だよね」としか思っていなかった。しかし今回の取材を通じて、そこに注ぎ込まれている多彩かつ高度な技術を知るにつれ、ピストンは「機能部品」であり、「精密機械」であり、大変に高度なテクノロジーが惜しみなく投入されている部品だ、と思い知らされたのである。