自立成長型化学産業への転換

摘要

ノーベル化学賞を受賞した野俵良治理化学研究所理事長は「化学産業は下請け産業になってはいないか」と化学産業のあり方に警告する。 自動車産業，IT·電子産業など世界的に競争力のある産業があり，製造業の付加価値額でも常にトップ3に入るわが国の化学産業の利益率は低く，国際的な比較競争力も年々低下している。 最先端の自動車，デジタル家電，医薬品などはすべて化学の恩恵である。 しかし"高騰する原油と自動車，IT·電子産業"の谷間，"産油国と成長市場の中国"の谷間のなかで，利益は産油国と自動車メーカーに偏っているのが現状だ。 欧米，中東，中国の化学企業は世界で勝ち残るシナリオを描き，大胆な戦略に打って出ている。わが国化学企業はこうした世界の動きに対し，自らの成長シナリオを描ききれてはいない。 激しく、そして厳しい国際競争のなかでわが国化学産業、化学企業が生き残っていくためには，研究開発，ものづくりによって将来を切り開き，需要業界の計画に左右されない"自立的に成長できる化学産業"を構築していくことが必要である。