花粉症に対するリポソ一厶ワクチン開発の進展

摘要

リポソームワクチンはスギ花粉症の根本治療を目的に開発された.リボソームはリン脂質とコレステロ一ルで形成される脂質二重膜の人工力プセルで，ワクチンには活性成分として不変ナチュラルキラ一T (iNKT) 細胞リガンドのアルファ-ガラクシルセラミド（alpha-GalCer)化合物が脂質二重膜に埋め込まれている.iNKT細 胞はさまざまなサイ卜カインを産生し，IgE抗体産生の抑制に働くヘルパーI型T(Th1)細胞や制御性T (Treg)細胞の分化を誘導する.また，リボソームワクチンの免疫抑制応答にスギ花粉に対する特異性をもたせ るため，リポソーム内腔には組換えスギ花粉抗原(Cryj1/2融合蛋白質）が封入される，リポソ一ムワクチンの開発はalpha-GalCer含有リポソームとCryj1/2融合蛋白質の2つの成分に分けて進められている.alpha-GalCer含 有リポソ一ムはアメリカFDAの希少病用医薬品の指定を受け，血液癌患者を対象とする骨髄移植後GVHDの 予防薬として第I相臨床試験を開始している.リボソームワクチンは花粉症以外のさまざまな免疫疾患への 応用が可能である.