腰椎術後低髄圧症候群を発症し保存的治療で良好な経過をたどった小脳出血の1例と救命しえなかった脳ヘルニアの1例

摘要

脊椎脊髄手術において，術後低髄庄症候群に続発する非常にまれな合併症として頭蓋内出血の報告がなされている.発症すると重篤な後遺症を残す可能性が高ぐ場合によっては死にいたることもある.われわれは，腰椎術後低髄圧症候群から小脳出血を発症し，保存的治療で良好な経過をたどった1例と，脳ヘルニアを発症し，手術的治療を施行するも救命しえなかった1例を経験したので，文献的考察を加えて報告する.症例1.71歳，女.主訴：両下肢痛.既往歴?家族歴：特記すべきことはない.現病歴：5年前に右下肢痛を主訴とした腰部脊柱管狭窄症に対して他院でL4/L5除圧術が施行された.2年後に右下肢痛が再燃し，再除圧を施行された.その後も症状継続するため手術目的に当院を紹介され受診となった.その後当院でL4/L5後方椎体間固定術を行ったが，L3前方すべりが進行し，両下肢痛と歩行障害が出現したため手術目的で再入院となった.入院時所見：前傾姿勢で緩和する両大腿L4領域の強い疼痛を認めた.長距離歩行困難であり，疼痛のため両側腸腰筋と大腿四頭筋の軽度筋力低下を認めた.画像所見：単純X線像ではL4/L5後方椎体間固定術後であり，L3前方すべりを認めた（図1a).単純MRI画像でL3/L4の狭窄を認めた（図1b,с).