葉緑体の動きに注目して植物工場の最適光量を見つけ出す

摘要

人工光を用いた閉鎖型の植物工場は、植物の栽培環境を制御することにより、安定的な農産物生産が期待できる。近年、その導入が進hでいるが、光や温度などの栽培条件を人為的に制御するため、エネルギー消費は決して小さなものではない。高コストな農業生産であることが農家経営を圧迫するとの指摘もあるほどで、植物工場の生産コストを抑える技術の開発が求められている。宇都宮大学バィォサイェンス教育研究センタ—の児玉豊准教授(写真)らの研究グル—プは、植物工場で作物を栽培するのに最適な光量を見つけ出す技術の開発に取り組hだ。児玉准教授がこう説明してくれた。「もともと、あまり応用を意識せず、植物の環境に対する反応を研究していたのですが、植物工場を見学させていただいたところ、作物に照射される光の最適な光量については、植物の反応に注目せず、経験的に決められていると伺いました。細胞生物学の研究者としては、植物の細胞内で起こる反応に照らして、もっと論理的に最適な光量を見つけられるのではないかと考えたのです。そこで注目したのが光合成の担い手である葉緑体でした」。