新規開発包装資材と冷蔵コンテナを活用した イチゴの船便輸送

摘要

日本のイチゴは果実の大きさや食味の良さから世界的な人気がある。近年では、東南アジアの富裕層を中心に日本産イチゴの市場が拡大しつつあり、輸出に取り組む産地も少しずつ増えてきた。現在、日本全国より年間約408t (平成W年、農林水産省統計)のイチゴが海外へと輸出されている。一方、このようなイチゴ輸出の取り組みは、ほぼすべてが航空便によって行われている。イチゴはやわらかく傷みやすいため、航空便を利用することで輸送時間を短縮し、輸送にともなう品質の低下を極力防いでいるのである。しかしながら、航空便は輸送時間が短いものの、船便に比べ搭載量が少なく、輸送費も高いことから、海外において日本産イチゴの販売価格が過剰に高まる原因となっている。また、空港での荷扱いや離着陸時に大きな衝撃や温度上昇が生じるリスクがあり、特に直行便でない場合は、このリスクはより深刻なものとなる実際に、現在海外で販売されている日本産イチゴのなかには、航空便輸送中に発生した衝撃や温度上昇により品質が低下したと見られるものが少なからず存在する。ィチゴの輸出において船便が利用できれば、輸送期間は長じるものの大量輸送が可能となり、輸送費を大幅にコストダウンできるため、日本産ィチゴを海外へよりリーズナブルに提供できると考えられる。船便でも陸送時等にある程度の衝撃が発生するものの、海上輸送中における衝撃は一般にわずかで、航空便のような便の乗り換えも少ない。したがって、より船便に適した品質保持技術を確立することができれば、航空便に劣らない輸送手段となる可能性がある。このような構想の下、九州沖裸農業研究センターでは、船便に適したイチゴの品質保持技術を確立するため、これまでにイチゴの船便輸送を試みてきた。その結果、冷蔵コンテナに2つの新規開発包装資材を併用することで、2週間以上にわたりイチゴの品質を保持したまま船便輸送できることを実証したので紹介する。