水素環境中における疲労き裂伝ぱ速度の繰返し速度依存性を考慮した疲労試験法の検討

摘要

数種の材料（オーステナイト系ステンレス鋼SUS304とSUS316L，時効硬化アルミニウム合金A6061-T6，低炭素鋼S10C焼鈍材）を対象とした低圧の水素ガス雰囲気下での疲労き裂伝ば過程の調査結果から，水素環境中における疲労き裂伝ば速度の繰返し周波数依存性を考慮した設計用データ採取のための合理的な疲労試験法について検討した．ここでは，水素ガスタンク用に用いられるA6061-T6について特に検証したため，その結果を記述する．繰返し周波数の低下とともに疲労き裂伝ば速度は高くなるが，水素平においてもすべり面分離機構が成立しているため，特定の周波数において伝ば速度は飽和する．そこで，まず疲労き裂伝ぱ速度が飽和する繰返し周波数を特定し，この周波数において疲労き裂伝ば試験を行うことで長期使用後の材科の安全を評価する必要があるものと考えられる．なお，評価に用いる供試材としては，市販のA6061-T6は固溶限度を上回る水素を初期から吸蔵しているため，水素の予チャージを施す必要はないものと思われる.