褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞の由来

摘要

褐色脂肪細胞はエネルギーを熱として散逸させる脂肪細胞である.最近の研究により，褐色脂肪細胞は胎児 期から存在する古典的褐色脂肪細胞と，長期の低温刺激などの環境要因によって白色脂肪組織中に出現する 誘導性の褐色脂肪様細胞(ベ一ジュ脂肪細胞）とに大きく分けられ，その発生学的特徴や発現造伝子ブ口ファ ィルがきわめて異なっていることが明らかとなつてきた.著者らは，褐色脂肪細胞やべ—ジュ細胞の発生?分化のメカニズムを理解する端緒として，転写調節制御因子であるPRDM16や，ヒス卜ン修飾因子である EHMT1を同定した.本稿では，おもにマウスを用いた遺伝的系列追跡(lineage tracing)によって明らかと なってきた古典的褐色脂肪細胞やべ一ジュ脂肪細胞の由来，またPRDM16やEHMT1などの制御因子がこれ らの細胞の分化へ与える影響などの最近の知見について概説する.