原子力リスク管理における科学と行政の結節点

摘要

科学技術，とりわけ自然科学に立脚してそれを論じる有識者は，とかく「客観的に正しい」科学技術情報が存在し，そこから一意に「正しい事実」が導き出され，それに基づく政策決定や行政行為がなされるべきであり，可能であるとの理解に立つ傾向がある．しかし，自然科学に立脚する分野でも，たとえば（原子力発電所に代表される）人工物を取り巻く自然災害リスクなどについては，科学の側からは「正しいが，一意には定まらない幅を持った」情報の提供しかできず，確定的な結論を得ることは不可能である．そのような場合に，どのような考え方に則ってリスクに対処すべきであろうか．そこでは，リスク管理原則（Risk Management Policy）を予め明確にしておく必要があり，これは優れて自然科学と社会科学の学際領域の問題である．