「強磁場の発生と応用 III」 パルス強磁場の発生

摘要

前章でも述べたが，水冷磁石を用いた定常強磁場の発生には莫大な電力を消費する．フロリダ州立大学の国立強磁場研究所でほ水冷磁石を用いて材料開発などもやっており，7時間連続して用いると電力コストが比較的安いアメリカでも約70万円相当の電力代がかかるそうである．しかし我々が強磁場を物理実験や材料評価などに使う場合ほ，磁場を上げ下げしながら使うのが普通である．もちろん何分，何十分のオーダーであるが，これを超ロングパルスと考えられなくもない．このような使い方をする場合，確かに消費電力は連続運転より少ないが，送電系など電力供給設備には連続して電力を使う場合と同じだけの容量が必要である．このためにも大きな設備費がかかる．また電力会社は最大使用電力によって契約料を定め，使用電力料に上乗せする．そのため定常強磁場の施設では1日に数時間しか電力を使わなくても，24時間稼働の工場などと同じカテゴリーで契約料を払わなければならない．東北大金研の強磁場超伝導材料研究センターではフロリダ州立大よりもはるかに高い電気代を払っている．これを緩和する方法は電力貯蔵である．大都市の昼間夜間の使用電力変動緩和のための電力貯蔵技術はまだ実用には至っていない．しかしこのような超ロングパルス磁場の場合はどうであろうか?最近は電池の技術が進歩してきたので小電力で時間をかけて充電し短時間で使うということも考えられる．