中小企業の販売価格への転嫁は進まず--中小企業金融公庫総合研究所

摘要

2004年に入って、輸出と設備投資を牽引役に、日本経済は回復傾向を続けている。 しかし、製造業と非製造業、首都圏と地方などの間に依然として格差が存在するなど、いくつかの懸念材料もみられる。そういった懸念材料の一つとして、「世界的な素材価格の上昇」が挙げられる。国際商品の動きを示す代表的な指数であるCRB指数をみると、2004年3月には、過去最高値をつけた1996年8月に近い水準である305.43となっている。 足元では若干弱含んでいるものの、依然として高い水準が継続している（図1）。 永らくデフレ傾向が続いてきた日本経済においても、不況を通じて集約·再編を果たすことで価格交渉力を強化させてきた大手素材メーカーによって、素材価格高騰に対する転嫁の動きが進んでいる。 具体的には、鉄鋼や紙などの業界で、昨年の年末から今年にかけて、数度の値上げが実行されている。 また、2003年春より原油価格も上昇を続けており、製品であるガソリン価格が上昇しているほか、塩ビ製品やセメントなど、多様な分野に影響を与えている。