ユビキチンープロテアソームシステムを夕一ゲットとする天然物化学·創薬化学の新しい展開

摘要

はじめに遺伝子から転写?翻訳されたタンパク質の働きによって生命活動が制御されている。そして，必要な量のタンパク質が必要な時に合成され必要な場所で機能することに加えて，必要でなくなったタンパク質がタイムリーに分解されることも生理的に重要である。 細胞内の主要なタンパク質分解系には，リソソームシステムとユビキチン－プロテアソームシステムの2つがあるが，選択的タンパク質分解に重要な役割を果たしているのが，ここで紹介する後者のシステムである。 なお，前者のシステムは非選択的タンパク質分解を司る。 現在，エビキチンープロテアソームシステムは，細胞周期，シグナル伝達，ストレス応答，免疫応答，小胞体での品質管理などの多様な生命現象を制御することが明らかになり，多くの注目をあびている0そして，昨年，アメリカにおいて，プロテアソーム阻害物質PS－341（Velcade）が多発性骨髄腫の治療薬としてFDA（食品医薬品局）により認可された。 プロテアソームは細胞内に普通的に存在して機能しているので?従来はプロテアソームを標的とする抗がん剤の有効性はあまり考えられなかったが，PS－341が承認されたことにより，プロテアソーム阻害物質が新しいタイプの抗がん剤として有効であることが証明されたと言える。 さらに，現在，このシステムを阻害する物質が，がん，炎症，免疫疾患などの治療薬として期待されている。