「プログ」は合成化学研究をどう変えるか

摘要

化学者は優れた物質を産み出すことを通じて自らを表現するとともに，この営みを社会に還元していくことを使命とする。とりわけ学術界においては，数多の実験を通じて創り出すべきものは物質そのものではなく，その統合的理解を促す「概念」となる。概念は「情報」という形でしか伝達可能となりえない。研究現場でも，鍵となる情報をひとつ得るだけで大幅な進展が見られることは珍しくない。物質と向き合う時間が誰より長い化学者といえども，情報伝達のプロセスから逃れることはできない。ゆえに，情報伝播経路には鋭敏な感覚を持つべきだと筆者は考えている。