HSC重油に悲観的な供給過剰感減産など柔軟な供給体制が不可欠

摘要

HSC重油に台頭していた供給過剰感は6月末に一段と強まっていた。 自家発電用などの一般産業向け需要が依然として縮小しているほか，5月まで好調だったボンドバンカーとしての需要も6月に入って急に萎んでしまったと伝えられること，北日本を覆っていた異常低温によって灯油が想定外の需要規模に膨らみ，製油所の定期補修時期を迎えていたこの時期に原油処理量を落とせなかったこと，などがHSC重油の在庫を増大させた背景と考えられる。 石油製品需要の留分別足取りの乱れと，留分すべてが連産されてしまう石油精製の宿命とが重なった結果といえる。 7月に入ってからは，ポンドバンカー需要は内外価格差の縮小によって発生した日本積みの割安感から回復する可能性があるが，一般産業向けHSC需要は当分回復を期待できない状況にある。 海外市況の下落によってHSC重油の輸出環境が悪化していることも，製品輸出という需給改善方法を使えなくしている。 更に，海外市場では白油の市況が高値で推移しているほか先高観が強いことから，今年は灯油の製品輸入を諦め，国内生産に頼ろうとする精製元売が増えるとみられる。 このため，HSC需給改善の大本命と考えられる大幅な減処理も実施しづらくなりそうだ。 果たして八方塞がりなのであろうか。製油所の定期補修が終わると，処理設備がラインアップすることで，連産品であることの弊害は大幅に改善される。 また，原子力発電に発生したトラブルによって電力向け石油需要が落ちないことも考えられ，LS用原油の処理と二次装置のフル稼働の相乗効果で，HSCが減産される可能性もある。 HSCの需給を改善させるためには，供給体制の柔軟な運用が不可欠といえよう。