増大する都市ガス大口供給ガス会社の需軍構造，活動を支配

摘要

わが国のエネルギー需要が低迷を続ける中で，都市ガス販売が依然好調だ。 この5年間だけをみても，平成11年度のガス販売量が217億7,367万m~3（1万1千kcal，以下同じ）だったのに対して，16年度は273億9,821万m~3と25.8％の増加となっている。 年平均で5.2％増と電力や石油，しPガスの伸びに比べて断トツの増加率だ。 5年で25％以上もボリュームが膨らんだ都市ガスのこの伸びはしかし，その内容をみると更に驚かざるをえない。 家庭用ガス販売が84億3,480万m~3から86億278万m~3へとこの5年で2.0％の伸びでしかなかったのに対して，工業用は80億6,350万m~3から120億7,746万m~3へと49.8％の伸びを示し，ボリュームの点からもすっかり主役の座が入れ替わってしまっているのだ。 主役の座が入れ替わったのは4年前の平成13年のことになる。 この工業用の年平均10％近い伸びはもちろん，10年前の平成7年に創設された大口供給制度の役割が大きい。 同制度は①工業用等の需要で天然ガスのシェアが高まっている，②これらの需要家は概して他燃料への転換が容易なため都市ガス会社との間で価格交渉力を有するようになってきている，③都市ガス供給区域外の工業用等の需要においても天然ガスのニーズが高まっているーなどといった当時の状況を背景に規制緩和，自由化の象徴として設けられたものだが，今やすっかり都市ガスの需要構造，更には都市ガス会社の活動そのものまで変えてしまっている。それはとりもなおさず，他燃料業界に与えるインパクトも10年前とはすっかり変わってしまっているということで，様変わりする都市ガス＝天然ガスは他燃料にとって今後更に脅威となることは間違いない。