進化を続ける磁気テープ～1巻154TB（テラバイト）の次世代磁気テープ材料

摘要

磁気テープと聞くと，一般的には「廃れた技術」，「時代遅れの製品」と感じる人が多いだろう。磁気テープは1970年代から90年代にかけて，音声や映像を記録する手段として広く普及したが，時代の流れとともに，その役割はCD，DVDなどの光ディスクに取って代わられた。その光ディスクも近年，ハードディスクドライブ（HDD）やフラッシュメモリに主役の座を奪われている。そんな中，磁気テープが今なお活躍している分野がある。コンピュータのデータストレージ用途である。近年，クラウドやビッグデータなどのICTを活用したサービスやビジネスの普及により，そこから日々生み出される個人や企業情報などの莫大なデータを，いかに安全に長期に渡り保管しておくかが喫緊の課題となっている。磁気テープはHDDなどの他のデータストレージ製品に比べて，①低コストである，②記憶容量が大きい，③消蟄電力が低くCO2排出量が少ない，④長期保存性に優れ信頼性が高い，⑤リムーバル（取り外し可能）でありメインサーバーから切り離して保管できるため，サーバー自体のトラブルの影響を受けにくく安全である　などの理由で，データのバックアップやアーカイブ用途として使用されている。一般的には“時代遅れ”と思われがちな磁気テープだが，ICTを支える技術として現在も活躍している。