医薬品のプロセス化学と触媒

摘要

触媒反応は，グリーンケミストリー12か条にも推奨されている通り，試薬そのものばかりでなく全体のコストも下げ，廃棄物の副生も低減するので，その結果として生産性の向上と効率化に貢献する．医薬品は超高付加価値物なので，高価な試薬や多段階工程，新しい合成技術の取り込みさえも，その製造コスト上は許容される．とはいえ，β－ラクタムのように1日の投与量が大きなものでは，その合成の難しさにもかかわらずコストは厳しく制限される．そのため，効率を極限にまで高め，廃棄物を極力抑えた採算に合う合成法の確立が最終目標であり，間違いなく触媒反応は強力な武器となる．本稿では，触妹や触媒反応全てを網羅することが目的ではなく，実際に医薬品の製造プロセスで役立っている触媒や触媒反応を紹介し，そのインパクトを概観したい．