RTRI's Large-Scale Low-Noise Wind Tunnel and Aeroacoustic Wind Tunnel Tests

摘要

1964年に登場した東京一大阪間を3時間10分で結ぶ速度210km/hの新幹線は，都市間輸送における速度向上の重要性と鉄道の可能性を世界に示すものであったが，開業当時には防音壁がなく，軌道中心から25m地点の騒音レベル評価値は90dBに近いものであった。 1975年に環境庁から新幹線騒音に関する環境基準と達成目標期間に関する告示がなされ，当時の国鉄，その後のJR新幹線3社は，新幹線騒音の低減に取り組み，多くの対策を実施し，速度向上を実現してきた。 そして，現在，山陽新幹線では，最高速度300km/h，東北，上越新幹線では275km/hの営業運転が行われているが，今後も，環境問題に配慮し，騒音低減対策の開発を進めながら，速度向上をはかることが不可欠である。 新幹線騒音は，集竃系騒音（空力騒音，スパーク音），車両上部空力騒音，車両下部騒音（転動騒音，ギヤ騒音，空力騒音），コンクリート高架橋の構造物騒音に分類されるが，列車速度の向上にしたがって，沿線騒音に占める空力騒音の寄与が，その高い速度依存性のため，ますます大きくなる。 また，空力騒音以外にも，速度向上に伴って，列車通過時の圧力変動などの空気力学的現象も大きくなり，沿線にその影響を及ぼすようになる。 このような状況を予測し，（財）鉄道総合技術研究所は，高速鉄道の空力騒音および空気力学的諸現象の研究開発に対応するために，1992年に大型低騒音風洞の建設を決定した。 部内外の専門家による技術検討委員会が開催され，そこで鉄道用大型低騒音風洞の基本仕様が検討された。 そして，基本仕様に基づき，低騒音化技術を取り入れた詳細設計がなされ，1994年6月に工事が開始され，1996年6月に米原に大型低騒音風洞が完成した。 本風洞完成後，基本性能試験が行われ，所期の基本仕様を満足していることが確かめられた。 大型低騒音風洞の大きな特長は，鉄道用風洞として，開放型と密閉型の2種類の測定部を持ち，世界に頬を見ない低騒苗性能を有し，国内の大型低騒音風洞としては高速の風速性能を有し，走行している車両と地面間の流れを模擬できる大型で高速の移動地面板を装備していることである。本風洞は，大きな測定部を有することから，鉄道のみならず自動車など汎用的な風洞試験にも対応することが可能である。大型低騒音風洞が完成してから約7年間が経過したが，ここでは，風洞の概要と基本性能，風洞で用いられている音響計測装置，これまで行われた空力騒音に関する風洞試験について紹介する。