通常歩行とハコビ歩行の方向判断方略：バイオロジカルモーション刺激を用いた検討

摘要

ヒトは限られた運動情報のみから生物の存在や動作、感情さえも知覚することが出来る（バイオロジカルモーション知覚）。例えば足首の位置を点として呈示するだけで歩行の進行方向の判断が可能である。本研究では通常歩行と伝統芸能の能楽で行われるハコビ歩行のバイオロジカルモーション刺激を用いて歩行の方向判断について検討した。下半身と上半身の動作種を独立に操作した結果、下半身がハコビ歩行の場合には通常歩行に比べて進行方向の弁別が困難であった。一方、上半身の情報が課題成績に与える影響は上半身に比べて小さなものであったが、課題成績によってその影響は質的に異なっていた。以上の結果から、歩行の進行方向の弁別しやすさによって上半身と下半身の情報の用い方が異なることが示唆ざれた。