車輪とレールの境界問題：鉄道総研における摩擦緩和材の研究開発－安全確保とコスト削減を目指して

摘要

車両の急曲線通過時に，各台車の前軸で発生する横圧は，内軌波状摩耗，外軌側摩耗，車輪フランジ摩耗およびきしみ割れ，表層はく離といった損耗·損傷や，乗り上がり脱線，きしり音，曲線抵抗といった事象の発生因子となっている．近年，これらの問題を材料面から軽減できる方策として，車輪踏面/レール走行面の潤滑が注目されている．鉄道総研では，車/レール潤滑の効果と課題に関する研究成果から，新しいタイプのレール走行面用潤滑剤を開発した．その最大の特徴は，直径約0.2mmの乾燥した粒子状の潤滑剤で，摩擦係数を適度に低減する（即ち緩和する）ことである．故に，本潤滑剤を「摩擦緩和材」と命名した．さらに，当該緩和材を効率よくレールへ供給する手段として，車上から車輪踏面/内軌走行面へ噴射する装置を考案し，摩擦緩和システムとして実用化を検討している．本稿では，システム開発のコンセプトを示すとともに，各種評価試験および検討結果と，今後の展開について紹介する．