射出成形品のウェルドライン形状に与える射出成形中のフローフロント形状の影響

摘要

本研究では，射出率および金型温度，保圧の各条件を変化させて対向流ウェルド部を有するPS樹脂射出成形品を成形し，成形品に生じるウェルドラインの溝深さならびに溝幅に与える成形条件の影響を検討した．さらにウェルド部における板厚方向の樹脂流動挙動の可視化観察を実施し，樹脂会合時におけるフローフロント形状と溝深さの関係を考察した．その結果，射出率や金型温度を高く設定することでウェルドラインの溝深さは浅くなる傾向を示した．一方，溝幅に関しては射出率が高い条件で広くなるが，金型温度が高い条件では溝幅は狭くなる結果となり，ウェルドラインの溝幅や溝深さは金型温度のみならず，射出率の影響も受けることが示された．また，保圧を高く設定すると，溝深さは浅くなる傾向を示したものの，溝幅に関しては保庄条件の変化に対する傾向はみられなかった．これは金型冷却による溝近傍の樹脂の流動性低下が影響していると推察された．