プラスチック成形品のネック伝ぱ解析(3)－有限要素法とデジタル画像相関法を用いたPBT成形品の材料定数同定法

摘要

本論文では，引張試験でネッキングおよびネック伝ぱ現象が発生するPBT試験片を対象として，従来のFEMを利用した弾塑性材料定数の決定に関する問題点について整理し，改善策を提案した．提案方法は，引張試験の荷重－変位線図と変形中のひずみの再現性を評価しながら弾塑性材料定数を同定するものであり，以下に示す結論を得た．1)引張試験の荷重－変位線図を再現する弾塑性材料定数は，多数の候補があり一意に決定できない可能性がある．材料定数の差は，ネック伝ぱ現象が発生している場合のひずみに影響を与える．2)ネック伝ぱ現象が発生している場合のひずみ計測方法には，非接触かつ大変形時の計測が可能なデジタル画像相関法(DIC)が有効である．3) DICから得られるネック伝ぱ時のひずみデータと引張試験の変位－荷重の両材料定数を重み係数で結びつけ，最小化すべき関数を構築した．4)提案手法をPBT試験片における材料定数の同定に適用し，得られた材料定数を用いて有限要素法(FEM) を実施した結果，引張試験の荷重－変位線図のみならず，ネック伝ぱ現象が発生している場合のひずみも再現できることを確認した．また，ネック伝ぱ現象が発生している近傍部のDICとFEMの結果を全視野で比較した結果，両者は定量的に良く一致した．これにより，PBT成形品の材料モデルを弾塑性構成則とする仮定は，良好に試験を近似できるものであることを確認した．