血管に沿って動く新生二ユー□ン

摘要

ヒトを含む様々な動物において． 成体脳内の特定の部位に神経幹細胞が存在し． それから新しい二ユー口ンが分化していることがわかってきた． 我々は． この新生ニュー□ンが細胞やその突起が密集した脳組織の中をどのようにして移動し． 目的地に達するのかということに興味を持ち． 研究を行っている． 我々は． マウス脳梗塞モデルを用いた遺伝学的標識実験によって． 側脳室外側壁の脳室下帯に存在する神経幹細胞から分化したニュー□ンが傷害部位へ移動して成熟することを報告した1)． この脳梗塞モデルマウス脳の解析過程で． 新生二ユー口ン（緑色）が細長い細胞塊を形成し． 血管（赤色）に沿って分布していることを見いだした（上の写真文献1）よの改変）．さらに．新生ニュー□ンと血管内皮細胞に異なる波長の蛍光タンパク質を発現させたマウスを用いた培養脳スライスのライブイメージングによって． 新生ニュー口ンが血管に沿って動いていることがわかった2) 幹細胞から二ユー□ンへ分化した後． 脳内の目的地まで動くために様々な足場が使われる． 胎生期においては放射状グリア細胞と呼ばれる細長い細胞の突起が足場になることが知られているが．哺乳類においては生後間もなくこのような突起は消失する． そこで成体脳の中の新生二ユー口ンは，困難な環境の中で効率良く移動するための戦略として． 細胞塊を作ってアスト□サイトのトンネル内を進んだり3)血管を足場にしたりしているのではないかと考えられる．一方．魚類の脳においては．成体においても放射状グリア細胞が存在しており． ニュー口ンはその突起に沿って活発に移動し． 非常に効率良く傷害脳組織を再生させることが明らかになった4)．現在．血管と二ユー□ンの相互作用についてその分子実態の解明に取り組んでいる．