第三の生命鎖は制御できるか？

摘要

近年，ポストゲノム研究の急速な進展に伴い，生体内におけ る糖鎖の新しい生物活性が次つぎと発見され，糖鎖は核酸やタ ンパク質に並ぶ第三の生命鎖として再び大きな注目を集めてい る，核酸やタンパク質と同様，これまでにも糖鎖の機能解析 は行われてきたが，糖鎖は核酸やタンパク質に比べて高次構造 が複雑であり，その取扱いも容易ではないことから，糖鎖に関 する研究は核酸やタンパク質に比べて大きな遅れをとっている しかし，生命現象における糖鎖の多様性と重要性が明らかにな るにつれ，さらなる糖鎖の機能解明とその機能を人為的に制御 する新技術の開発が精力的に行われるようになってきた．この ような背景のもと，最近，糖鎖機能の人為的な制御を可能とす るブレークスルーとして，標的糖鎖を選択的に認識する人工低 分子レセプターが開発された2），さらに標的とする糖鎖を，特 定波長の光照射下で選択的に光分解する人工生体機能分子も開 発された3) .ここでは，これらの概要について紹介する．