標識方位をもちいた高速地すべり岩盤ブロックの回転解析1989年福井県越前海岸崩壊を例に

摘要

地すべり（広義）はさまざまな基準で分類することができるが（大八木，2004），移動体の運動様式，すなわち「どのように運動した（している）のか」は基本的な基準の一つである。しかし，さまざまなタイプの地すべりの中でも移動速度が大きい場合には実際の運動様式がわかっていない場合も多く，斜面地質学の課題の一つとなっている（藤田ほか，1999）。 つまり，低速の地すべり（狭義）のような場合には，移動体の挙動を観察したり観測したりすることが可能であることが少なくないし，活動の初期を中心に，移動体の山部が地形として発生域に残存することもあり，これらによって移動様式を知ることができる。 これに対し，移動速度の大きい崩壊の場合には，観察や観測の機会が相対的に少なく，移動体の分解程度もー般に大きいために，どのような運動があったのかを理解することが困難になりやすい。 しかし，岩盤崩壊（岩盤トップリング岩盤すべり岩盤崩落を含む）における移動体の挙動を明らかにすることは，適切な斜面対策工の設討といった防災上の観点からも必要なことである.