関東山地東緑，青梅市成木崩壊地の地形，堆積物の特徴と崩壊の発生時期の推定

摘要

成木崩壊地は，関東山地東緑，東京都青梅市成木4丁目にある秩父帯成木ユニットを母岩とする崩壊である.地形面の開析関係から，崩壊地は発生域の崩壊壁,堆積域の高位緩斜面，低位緩斜面に分けられる．後期更新世後期--末期の段丘面が低位緩斜面を下刻して形成されていることから，崩壊の発生時期は後期更新世以前となる．本研究の意義は，関東山地で初めて古期崩壊の記載,編年を行ったこと，及び古期崩壊の編年に段丘面との上下関係を用いたことである．小松原（1993）は,新潟地域ではし山地の起伏，隆起量と地すべりの規模，密度に正の相関があることを示し，山地の侵食，斜面の形態に地すべりが果たす役割が大きいことを明らかにした．関東山地の形成，解体に地すべり，崩壊が果たす役割や，地すべり，崩壊の発生集中時期，頻度などを議論するためには，今後古期地すべり，崩壊の抽出,記載，編年を行うことが望まれる．また，山間部では一般にローム層，テフラの保存が悪いことから，古期地すべり，崩壊の編年には年代が既知の段丘面との上下関係に基づくことが有効である．